この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
ご相談者は,夫と口論が絶えず,お互いに離婚を言い出すようになっていたのですが,夫から「絶対に子どもは渡さない。お前には収入がないんだから,お前は親権者になれない」と言われ,子どもを手放すのが嫌で,夫と別れられずにいました。お子さんはまだ幼児で目が離せず,ご相談者は働きに出られる状態ではありませんでした。
解決への流れ
離婚後の親権について,裁判所で争わなければならない場合,裁判所が何を重視するかについてご説明しました。最も重視されるのは,「これまでと現在の監護養育状況(お子さんの育児をどちらがどのように担当していた/担当しているか)」であって,収入は考慮要素の一つに過ぎないと知って,ご相談者は安心したご様子でした。何度かご相談を重ねた後にご依頼を受け,離婚調停に同席しました。裁判所の手続では,離婚に至った理由や,夫がほとんど育児を担当してくれなかったことなどを,調停委員や調査官,調停官(裁判官)に具体的に説明し,無事に親権を獲得することができました。
親権争いにおいて,「収入がなければ絶対に親権を取ることはできない」と思い込んでいらっしゃる方は案外多いように思います。もちろん,お金は大切ですが,日々手を尽くして世話してくれる人の存在なしに子どもが成長することはできません。裁判所もそれをよく分かっていますので,「これまでと現在の監護養育状況(お子さんの育児をどちらがどのように担当していた/担当しているか)」を最も重視するのです。親権争いをする上では,様々な事実を整理し,優先順位をつけながら主張を展開することが効果的です。このケースでは,主張の展開がうまくいき,こちらの望む形での解決につなげることができました。なお,このケースでは,弁護士費用は法テラスを利用していましたので,解決までの間の経済的なご負担が少ない形で進めることができ,その点でも喜んでいただけました。