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宅配で届いたひっくり返ってバラバラの寿司「食べた後キャンセル」SNSで物議、法的に可能なの?
2024年05月20日 10時42分
#デリバリー #寿司 #キャンセル

デリバリーサービスで握り寿司を注文したら、ひっくり返ってバラバラになった状態で届いたという利用者が、自分で直して食べた後にキャンセル対応してもらったとするXでの投稿が物議を醸している。

利用者は、「(握り)寿司を頼んだらちらし寿司が来た件について」と最初に投稿。「自分で作り直して食べたのでまあオッケーなんです。ただこういったデリバリー普段使わないのでびっくりして投稿してしまった」と経緯を説明した。

その後、「キャンセル対応をしていただきました」と報告したうえで、「キャンセル=返金対応という認識です。食べた後に対応させるのおかしいって言われると確かにそうだなとも思うんですけど、どうしたらよかったんですかね?」と対処に悩んだことを明かした。

投稿をめぐっては、バラバラの状態で届いたことには「これはひどい」「ドライバーが100%悪い」という意見が圧倒的多数だったが、食べた上でキャンセルしたことに対しては「食べた上にキャンセル対応させたんか」「お寿司食べたなら返金は流石に断るかな」と疑問の声もあがっていた。

今回のケースではデリバリー側がすぐにキャンセルに応じたようだが、もし任意で応じなかった場合、ひどい状態で届いた飲食物を消費した上でキャンセルを求めることは法的に可能なのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。

デリバリーサービスで握り寿司を注文したら、ひっくり返ってバラバラになった状態で届いたという利用者が、自分で直して食べた後にキャンセル対応してもらったとするXでの投稿が物議を醸している。

利用者は、「(握り)寿司を頼んだらちらし寿司が来た件について」と最初に投稿。「自分で作り直して食べたのでまあオッケーなんです。ただこういったデリバリー普段使わないのでびっくりして投稿してしまった」と経緯を説明した。

その後、「キャンセル対応をしていただきました」と報告したうえで、「キャンセル=返金対応という認識です。食べた後に対応させるのおかしいって言われると確かにそうだなとも思うんですけど、どうしたらよかったんですかね?」と対処に悩んだことを明かした。

投稿をめぐっては、バラバラの状態で届いたことには「これはひどい」「ドライバーが100%悪い」という意見が圧倒的多数だったが、食べた上でキャンセルしたことに対しては「食べた上にキャンセル対応させたんか」「お寿司食べたなら返金は流石に断るかな」と疑問の声もあがっていた。

今回のケースではデリバリー側がすぐにキャンセルに応じたようだが、もし任意で応じなかった場合、ひどい状態で届いた飲食物を消費した上でキャンセルを求めることは法的に可能なのだろうか。大橋賢也弁護士に聞いた。

●バラバラに届いたなら「代わりの物を要求することも可能」

──デリバリーで注文した飲食物がバラバラになって届いた場合、法的にはどのような対処ができるのでしょうか。

注文者は、引き渡された目的物が品質に関して契約の内容に適合しないとして、代替物(バラバラになっていない飲食物)の引渡しを請求することができます(民法562条1項)。

もっとも、たとえば飲食店が混み合っていて、すぐに代替物を提供することが難しいような場合には、注文者は、直ちに売買契約を解除することもできます(民法542条1項4号)。

注文者が契約を解除した場合、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負うことから(民法545条1項本文)、飲食店は、注文者に対し、受け取った代金を返還する義務を負います。

つまり、注文者は、飲食店に対し、代金の返還を請求することができることになります。

──注文した飲食物がバラバラになって届いた場合、一方的にキャンセルし返金等を求めることは可能でしょうか。

注文者が、昼食や夕食のために飲食物を注文したけれども、飲食物がバラバラになって届いた場合、すぐに代替物を引き渡すよう求めても、飲食店が対応できない場合もあるでしょう。

このような場合、たとえば18時ごろ届くよう注文した物が日付が変わる0時頃に届くなど、ある程度の時間が経過した後に代替物を引き渡されても、注文者としては意味がないということになってしまいます。

そこで、先ほど述べたように、注文者は、直ちに売買契約を解除することができることになります。

●食べてしまったなら「キャンセル・返金は通常不可」

──今回のケースだとバラバラになっていた寿司が届いたようですが、注文した物の状態は契約解除にどう影響しますか。

民法541条但し書きが、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、契約を解除することができない、と規定しています。

つまり、訴訟になった場合には、飲食物がバラバラになった状態が、「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微」かどうかで判断されることになります。

もっとも、せっかく注文した飲食物が、少しでも崩れていれば気持ちが良くないでしょうから、飲食店は、「取引上の社会通念に照らして」などとは言わずに、キャンセルに応じてくれる場合が多いのではないかと思います。

──キャンセルが可能な状況だったとしても、今回のケースのように、いったんはそれを受け入れて飲食物を消費してしまった場合、それでもなおキャンセルし返金等を求めることは可能なのでしょうか。

飲食物を消費したということは、代替物の引渡請求権や、売買契約の解除権を放棄したとみなされる可能性が高くなるので、キャンセルして返金を求めることはできなくなるでしょう。

飲食物を消費した上で、返金も求められることになれば、注文者は、二重に利益を得ることになってしまいます。今回の事例では、注文者が飲食物を消費し、かつ代金の返還を受けたようですが、例外的な事例と考えるべきです。

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